東京地方裁判所 平成10年(行ウ)143号 判決 1999年9月22日
原告
目黒和彦
(ほか二九名)
右三〇名訴訟代理人弁護士
小島延夫
同
吉村清人
被告
東京都足立区建築主事 小出久朗
右指定代理人
内山忠明
同
松井克之
同
小山巳芸
同
古谷英男
同
新井康浩
主文
一 本件訴えのうち、原告目黒和彦、同目黒千代、同湯浅誠之助、同湯浅よね、同大峯ふさ子、同福王寺四司治、同金沢蓉子、同丸谷通郎、同堀井整、同清水喬子、同清水充、同清野純弘、同小川一郎、同伊藤守、同伊藤綾子、同采女圭吾、同青木謙之及び同川北朝彦に係る訴えを却下する。
二 第一項記載の原告らを除くその余の原告らの請求を棄却する。
三 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 争点1(原告目黒和彦ほか一七名が本件処分の取消しを求める原告適格を有するか否か)について
1 行政庁がした処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができるものであるが(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)九条)、右の「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうものであり、当該処分の根拠となった行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである(最高裁平成元年(行ツ)第一三〇号同四年九月二二日第三小法廷判決・民集四六巻六号五七一頁、最高裁平成六年(行ツ)第一八九号同九年一月二八日第三小法廷判決・民集五一巻一号二五〇頁参照)。
2 法六条一項は、建築主が同項各号の建築物を建築しようとする場合には、当該工事に着手する前に、当該工事の計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならない旨規定している。右建築確認の制度は、法一条に定めるとおり、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とするものであり、そのため、法及び法施行令等は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準として、延べ面積の敷地面積に対する割合(五二条)、建築面積の敷地面積に対する割合(五三条)、建築物の各部分の高さ(五六条)、日影による中高層の建築物の高さ制限(五六条の二)、防火地域又は準防火地域内における建築物の構造(六一条、六二条)等を定めている。
右規定を通覧し、右規定の定める基準により隣接地等の住民が享受できる利益の内容等に照らせば、法及び法施行令等は、健全な建築秩序を確保し、生活環境の保全、一般的な火災の危険等の防止という公共の利益の増進を目的とするにとどまらず、当該建物の建築により直接的に日照、採光、通風、火災等の災害の影響を受けるおそれのあるもの、すなわち当該建物の敷地の隣接地又は極めて近接した土地に居住する者が違法な建築確認により右生活環境を侵害されず、火災等の危険にさらされることがないという個人的な利益を保護する趣旨を含むものと解するのが相当であるが、それ以上に、当該建物から一定程度以上離れた場所に居住し、当該建物の建築により直接的に右生活環境上の利益を侵害されるおそれのない者が、違法な建築により右生活環境及び安全に何らの影響も受けることがないという利益までを個別に保護する趣旨までは含んでいないというべきである。そして、法は、後者の近隣居住者の生活環境上の利益は、右建築確認制度が目指す公共の利益の保護を通じてその結果として保護されるべきこととしているものと解される。
これを本件についてみるに、原告らが肩書地に居住する者であることについては当事者間に争いがないところ、〔証拠略〕によれば、原告目黒和彦ほか一七名のうち原告目黒和彦、同目黒千代、同金沢蓉子、同丸谷通郎、同堀井整、同清水喬子、同清水充、同清野純弘及び同小川一郎は、いずれも本件建物から現況幅員が約四メートルの道路を隔て南側に約一〇メートル以上離れた位置に居住する者であり、原告川北朝彦は、本件建物から幅員約四メートルの道路を隔て南東側に約一〇メートル以上離れた位置に居住しており、原告湯浅誠之助、同湯浅よね、同大峯ふさ子及び福王寺四司治は、いずれも本件建物から幅員約三・五メートルの道路を隔て南西側に約二〇メートル離れた位置に居住する者であり、原告青木謙之及び同宇女圭吾は、いずれも本件建物の北西側に約二〇メートル以上離れた位置に居住する者であり、原告伊藤守及び同伊藤綾子は、本件建物の南側面から一軒家を隔て南側に約一〇メートル、右建物の東側面から一軒家を隔て東側に約一〇メートルそれぞれ離れた位置に居住する者であること、原告ほか一七名は、本件建物の建築による日影の影響を全く受けないことが認められる。
そうすると、右の原告らはいずれも本件建物から約一〇メートル以上離れた場所に居住しており、本件建物の建築によって日照、採光、通風を直接に侵害され、また、災害の危険を直接受けるとはいい得ず、右の原告らの利益は法律上保護されている程度に具体的なものとはいえないといわざるを得ない。
したがって、右の原告らは、本件処分により、法律上保護された利益を侵害されたものとはいえず、右の原告らは、本件処分の取消しを求める原告適格を有しないというべきである。
3 この点、原告らは、風害、電波障害、災害等の危険が及ぶおそれのあることを指摘し、風害、電波障害等については、東京都足立区建築紛争予防条例上、中高層建築物等の建築主は、建築物の高さの距離の範囲内の近隣住民に対して説明すべき事項とされていることから、原告らは法律上保護された利益を有すると主張する。
しかしながら、法及び法施行令等に近隣居住者が風害、電波障害を受けないという利益を個別に保護しているとみるべき規定はなく、また、当該建物の建築により直接的に右生活環境上の利益を侵害されるおそれのない者が、違法な建築により火災等の災害の危険にさらされることのない利益までを個別に保護する趣旨までは含んでいないというべきことは既に述べたとおりである。
また、建築紛争予防条例上、建築主は、中高層建築物等を建築しようとする場合において、中高層建築物の敷地境界線から法施行令二条一項六号の規定によるその高さの二倍の水平距離の範囲内にある土地又は建築物に関して権利を有する者及び当該範囲内に居住する者(近隣関係住民)からの申出があった場合ときは、建築に係る計画の内容について、説明会等の方法により、近隣関係住民に速やかに説明すべきとされているが、右条例はあくまでも中高層建築物等の建築に係る計画の事前公開等に関し必要な事項を定めることにより、良好な近隣関係を保持し、もって地域の健全な生活環境並びに居住環境という公益の維持及び向上に資することを目的とするものであり、建築物の近隣関係住民の権利ないし利益を個別具体的に保護するものと解することはできない。
4 以上から、原告目黒和彦ほか一七名は、本件処分の取消しを求める原告適格を欠き、その訴えは不適法なものである。
二 争点2(本件処分が、建築安全条例四条二項に違反する違法なものであるか否か)について
1 本件建築物の延べ面積が四三八七・九八平方メートルであること及び高さが二〇・二五メートルであることは当事者間には争いがなく、したがって、本件建築物は建築安全条例四条一項及び二項の規制を受けることになり、本件敷地が幅員六メートル以上の道路に一〇メートル以上接しなければならないことになる。
被告は、昭和二五年当時、本件敷地の東側に接して建築線間の距離が六メートルの本件建築線が存在しており、右建築線は法附則五項によりその建築線の位置に法四二条一項五号による道路の位置の指定があったものとみなされるものであるから、本件敷地は、その東側において、幅員六メートルの位置指定道路に延長一六・八一六メートルにわたって接していることになるから、建築安全条例四条の規定に適合している旨主張し、原告はこれを争うので、以下、この点に関して判断する。
2 〔証拠略〕によれば、(1) 警視総監藤沼庄平は、昭和九年五月一二日付けで「建築線ヲ左ノ通指定シタリ」とする警視庁告示第一五二号をなしたこと、(2) 警視総監が指定した右建築線には告建番号第八四二四号をもって指定された建築線が含まれており、その建築線については、調査済番号が「第一九号同署(千住署)」、指定年月日が「同(昭和九年四月一〇日)」、建築線間の距離(幅員)が「三米、四米、六米」、建築線の長さが「一六五・六一米、二三八・〇五米、一六一・八一米」、指定の場所が「同市(東京市)同區(足立区)高砂町百三十三番地、百三十四番地、百三十四番地ノ一、同區五反野南町千三百八十一番地、千三百八十二番地ノ四、千三百八十三番地、千三百八十七番地ノ一、千三百八十八番地、千三百九十一番地乃至千三百九十七番地、千三百九十九番地乃至千四百十二番地、千四百十四番地、千四百十六番地乃至千四百二十二番地、千四百五十七番地、千四百八十番地、千四百八十一番地、千四百九十九番地ノ一」とそれぞれ記載されていること、(3) 右建築線の位置は申請人三田弥平の建築線申請図(〔証拠略〕)に示されていること、右申請図によれば、本件敷地の東側の建築線は、建築線の間の中心には水色に塗られた水路部分があり、水路部分の両側にピンク色で塗られた既存道路と表示された部分が、さらにその両側すなわち右建築線の両端に黄色で塗られた細長い部分があり、建築線間の距離は六メートルと表示されていること、水色部分とピンク色部分は官地であり、その幅は二・五間となっていること、(4) 東京都足立区土木部道路管理課の管理に係る平成九年作成の道路水路区域表示図(〔証拠略〕)において、本件敷地に接する東側に東京都足立区が管理する敷地が官有地の現況道路(東側道路)が表示されており、その幅員は四メートル五五(二・五間)ないし五メートル三四六と記載され、本件敷地の部分では五・〇一八メートルと表示されていること、(5) 右現況道路に四・五五メートルを上回る幅員の部分があるのは、官有地部分のほか、昭和五四年一一月一日に足立区が鴨下ゆき子から寄付を受けた官有地東側で接する足立三丁目一四九九番八の土地ないし道路敷地として無償使用することの承諾がある民有地(一四五七番九)等を含んでいるからであること、(6)本件敷地の東側の建築線の長さは一六一・八一平方メートルであるのに対し、右現況道路のうち右建築線が指定されている部分(足立区三丁目一四一五番一地先から一三八四番先地先まで)の距離は一六〇・〇七九メートルであることが認められる。
右認定の事実によれば、警視総監は、昭和九年四月一〇日、警視庁告建第八四二四号をもって本件敷地に接して東側に本件建築線を指定したものと認められる。そして、右認定のとおり、警視庁告示第一五二号(〔証拠略〕)には、右建築線等の間の距離(幅員)は「三米、四米、六米」と記載されており、これと建築線申請図(〔証拠略〕)に右建築線間の距離として六メートルと記載されていることを照らし合わせてみると、本件建築線は、水路をまたぐものとして六メートルの幅員をもって指定された建築線であるとみるべきである。
この点に関し、原告らは、市街地建築物法上、昭和一三年の改正までは、建築線の幅員九尺(約二・七メートル)以上のもの又はそうなると計画されているものが道路とされていたものであるところ、本件建築線(幅六メートル)をもって水路の両側に計画された道路は、両側併せても三・五メートル程度しかなく、右建築線と水路の間の道路は、いずれも一・八メートル程度のものにすぎないことになるから、右建築線の指定は有効なものとはいえない旨主張する。
しかしながら、後述するように本件建築線の指定は、水路をまたがるものとして指定されたものとみるべきであるから、原告らの右の主張は失当である。
3 右2に認定した本件建築線がその後廃止された事実、あるいはその指定が失効したものとすべき事情は認められないから、右建築線は昭和二五年当時も有効に存在したものというべきであり、したがって、本件建築線は、法附則五項によって、その位置に法四二条一項五号の規定による道路の位置指定がなされたものとみなされることになるものである。
そうすると、本件敷地は東側において幅員六メートルの位置指定道路に接することになる。
この点に関し、原告らは、水路がある場合には、その両側にそれぞれ道路があるのであって、水路をまたぐ道路ということはあり得ないものであり、本件建築線の指定が有効であったとしても、本件のように、建築線の間に水路があるような場合には、水路の縁と建築線までの間を道路と想定して指定された建築線であるにすぎず、被告が本件処分の前提としたような水路をまたぐ道路を想定して指定された建築線であるということはできない旨主張する。
しかしながら、建築線とは、建築線の指定をすることによって、将来的に建築線間の空間を道路とするというものであり、建築線を指定した時点の建築線間の状態がどのようなものであるのかを問わず、将来に向かって道路を整備しようとするものであるから、必ずしも、指定の当時において建築線間の状況が道路である必要はなく、建築線の間に建築物や水路等が存在していても建築線の指定とは矛盾しないものである。実際にも、本件建築線がその間に水路部分を含むものとして指定されたものと認めるべきことは既に説示したとおりであり、仮にそれが水路をまたがない道路を想定した建築線の指定であるとすると、建築線申請図(〔証拠略〕)によれば、水路の幅が二・五メートルであることが認められることから、道路の幅は三メートルにも満たないものになり、警視庁告示第一五二号(〔証拠略〕)に建築線間の距離(幅員)として「三米、四米、六米」と記載されていることと矛盾することになってしまうのである。原告の右主張は採用することができない。
4 原告らは、仮に、本件建築線が有効に存在し、かつ、法附則五項でその位置に法四二条一項五号による道路の位置の指定があったとみなされる場合であっても、東側道路の現況は幅員六メートル未満であるので、建築安全条例四条一項、二項には適合しない旨主張する。
そこで検討するに、建築安全条例四条は、同条例一条からも明らかなように、法四三条二項による建築物の敷地及び建築物の道路との関係についての制限の附加をした規定であり、法四三条を前提としているのであり、同条例において明示的に道路の概念を定義する規定は存在しないから、同条例四条の「道路」は、法四三条の「道路」と同義と解するのが相当である。しかるところ、法四三条の「道路」の意義は法四二条に規定されているとおりであり、「道路」には、位置指定道路も含まれるとされている。したがって、建築安全条例四条の規定する幅員以上の位置指定道路に接していれば、同条例に適合しているというべきである。
原告らは、建築安全条例四条一項、二項にいう「道路」は、現実に存在している道路を意味しており、道路の幅員が現実に六メートル以上確保されていない限り同条の要件を満たすとはいえない旨主張するが、採用することができない。
しかして、本件敷地の場合には、前示のとおり幅員六メートルの位置指定道路に接していることになるから、建築安全条例四条一項、二項に適合するものといえる。
5 原告らは、法四二条一項五号の位置指定道路について、指定はされても未だ道路としての実体を備えていないものは、同号の道路とは認められないと解するべきであるとも主張している。
しかしながら、法四二条一項五号には道路の築造期間を限定する規定はなく、かえって同項四号のような期間の制限をしていないこと、同項五号の道路の位置の指定はそれだけで完結した行政処分であり、指定に関する法上の規定には特に指定後の事情による失効等の定めがないこと、位置指定がなされた後に道路が築造されない場合には同号の道路と認められないとすれば、行政処分によって私道の存否ないし位置を明確にすることにより、その事実上の廃止変更を困難にし、道路としての機能を十分に発揮せしめるという同号の趣旨が没却されてしまうことからすれば、同号の指定があり、あるいはその指定があったものとみなされる以上、当該指定に係る道路は、それが指定どおりの実体を備えているかどうかにかかわりなく、同号の位置指定道路と認められると解すべきである。
したがって、原告らの右主張は失当である。
6 さらに、原告らは、従来東側道路において、道路の現況の境が道路境界線として扱われてきたとして、このことをもって、本件敷地の東側に接する部分には建築線及びこれを前提とする道路位置指定(法附則五項)は存在しなかったというべきである旨主張する。
しかしながら、前示のとおり、昭和二五年当時、本件敷地に接して東側には本件建築線が存在し、法附則五項によって、本件建築線間に法四二条一項五号による道路の位置の指定があったとみなされたものである。そして、過去の建築規制行政において原告ら主張のような取扱いが存在したとしても、そのことにより、法附則五項に基づき位置指定道路とみなされたものが廃止されたことになるなどのことはあり得ず、原告らの主張は失当であるといわざるを得ない。
7 以上からすると、本件敷地が幅員六メートルの位置指定道路に一〇メートル以上接していることから建築安全条例四条一項、二項に適合するとした被告の判断に違法はないというべきである。
三 争点3 (本件処分が建築主において足立区環境整備指導要綱上負っている義務の不履行を看過してなされた平等原則に反する違法なものであるか否か)について
建築の確認とは、建築主が、建築物を建築しようとする場合に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることについて、建築主事の確認を受けるというものであり(法六条一項)、したがって、建築確認において審査の対象となる範囲も、建築物の建築計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているか否かに限られるものである。
ところで、足立区環境整備指導要綱は、その三五条において「地上階数四以上かつ計画戸数三〇戸以上を建設する場合には、公共施設整備のための用地を、区と協議の上無償譲渡すること」を定め、また、同細則一八条は、用地提供ができない場合には、環境整備寄附金を納入することを定めている(弁論の全趣旨)が、右要綱及び細則は、足立区が建築規制行政において行政指導の基準として定めているものにすぎず、これが「当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定」に該当しないことは明らかであるから、建築物の建築計画が右要綱に適合するか否かは、建築確認の際に建築主事が審査すべき対象にはならないというべきである。
そうすると、本件建物が足立区環境整備指導要綱に適合しているか否かは、本件処分の適法性を左右しないというべきであるから、原告らの主張は失当である。
四 争点4(本件処分が、不当な圧力によってなされたものとして違法なものであるか否か)について
前述のように、建築確認の際に建築主事は、建築計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に合致しているか否かを審査するのであるから、建築計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に合致している以上、仮に被告に不当な圧力がかかったとしても、そのことだけをもって本件処分が違法になるということはできない。
したがって、原告らの主張は失当である。
第四 結論
よって、本件訴えのうち原告目黒和彦ほか一七名に係る訴えは、不適法であるから、これを却下することとし、その余の原告らの本件請求については、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行訴法七条、民事訴訟法六一条、六五条一項本文を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 谷口豊 加藤聡)